「生楽器を使って自分なりに何か新鮮な音ができないかと考えると同時に、無駄を排除したごくシンプルな音と、それとは対照的なエレクトロニックな音を組み合わせてみたりもした。」
- NEOLインタビュー
「たとえばアフリカ音楽とインド音楽の共通点を見つけたり、アフリカ音楽と中国の音楽の類似点がわかったりとか、そうした発見があるから音楽って面白いんだ。」
- ele-kingインタビュー
Pitchforkのレビューによれば、Sampha(サンファ)は5人兄弟の末っ子で、3歳の時父親がピアノを買ってくれた。それはかけがえのないものになったそうです。「(No One Knows Me) Like the Piano」で歌っているように彼のソウルそのもの。
98年に父を肺癌で失くし、2015年9月には母も癌で亡くなった。『Process』のエレクトロ・ソウルから彼の母親の魂を感じるでしょう。またサンファ自身、喉の腫瘤に悩まされたことを「Plastic 100ºC」で歌っています。「不安ととも眠る。腫瘤はいったい何なのか」。
2枚のEPに加えて、フランク・オーシャン、カニエ・ウェスト、ドレイク、SBTRKT、ソランジュらの作品にもフィーチャーされた歌声は確かな存在感があります。穏やかで哀しみをたたえたファルセット。たとえば「Under」では、ジェイムス・ブレイクのようにヒップ・ホップ、トラップ・ビートを自身のものとしています。
アルバム中、最も明るい曲「Kora Sings」でさえ陰を帯びています。母に言及し「ゆりかごからそばにいるあなた」、「あなたは僕の天使、消えないで」と歌う。「Blood on Me」では個人的なトラウマから歩き出す不安を歌う。「僕は今、途上にある。独りで。制御できない」。
アルバムのクローザー「What Shouldn’t I Be?」では子ども時代の幸せな原風景を歌っています。「兄弟に会いたいけど、しばらく帰れない」。しかし冒頭ではこうも歌っています。「いつ帰ってきてもいいんだよ」。