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山尾悠子 - ラピスラズリ(Lapis lazuli)

山尾悠子が分からない。小説をざっと斜め読みする癖のある私には、彼女の密度の濃い、幾重にも折り合わされた物語は適さないのかもしれません。しかしそれでもなお求心力があって私を捉えてしまうのです。

良くも悪くも分かりすぎるのはつまらないです。伊坂幸太郎の小説を10年前までは読んでいました。今は読んでいません。分かりやすくエンターテインメントで面白い。でも、だからこそもういいかなとも思ってしまう。誤解ないように付け足すと彼の作品は涙が出るくらい感動したし、今も印象に強く残っています。

山尾悠子を読むのは私にとってある程度の苦行です。何人もの登場人物や、聞き慣れない固有名詞や奇怪な化け物がまず分からない。しかし、そこには未知の世界がある。長い歴史がある。決して出会うことのない女性の、深く個人的な体験がある。何より彼女は本当に真剣に必要に迫られてこの物語を書かなければいけなかった。

商業作家はそれで食っているのだから良くも悪くも量産しなければいけない。時には書きたくない話も、書きたくない要素も入れざるをえないだろう。山尾悠子にはそれがない。彼女の作品を読むのは苦痛で仕方ない。けれど細部に神が宿っていて私に寄り添ってくれる。懐かしい何か。文字通り神、ないし仏が居る。

子どもの頃、祖母の家に泊まって、仏壇のある座敷で寝て、戸棚から古い銅貨を掬い上げた記憶と通じるかもしれません。